以前、定期健康診断のついでに有料の「腫瘍マーカー検査」なるものを受けた内容を書きましたが、よくよく調べてみると、一部の検査をのぞいては癌の早期発見は期待できないようで、必要性がよくわからないものだという結論に達しました。
さらに調べていく中で、新たながん検診方法として「N-NOSE(エヌノーズ)」という線虫の嗅覚を用いた検査が実用化されていることを知りました。そういえば、何度かニュースで見たことがあり、その時もすごいな~と思っていたのですが、ついに実用化され一般の人も利用できるようです。今回は、この検査のメリット・デメリットなどを紹介します。
現在の腫瘍マーカー検査・がん検診の問題点
腫瘍マーカー検査
マーカーの種類がたくさんあるが、一部の検査をのぞいては、癌の早期発見には役立たない。精度もそれほど高くない。
この検査の本来の存在理由は、進行がんの治療段階において、治療の効果を数字で測定でき、治療前後、経過の観察に用いることのようです。
がん検診
胃がん:胃部X線検査、肺がん:胸部X線検査、大腸がん:便潜血検査、乳がん:マンモグラフィ、子宮頸がん:細胞診などが定期健康診断などで実施される一般的な検診ですが、実施には手間がかかったり、設備が必要だったりするので、費用効果を上げるためがん発症の確率の高い年齢の方のみが対象であったり、判定できる癌の種類が限られている。また、この検査では早期に発見できないものもたくさんあることが課題のようです。
若くして癌になる人は自覚症状が出るまで分からないし、5年生存率の低いすい臓がんなどはもともと調べられない。画像系の検査が多いですが、ある程度癌が成長しないと見つけにくいということになる。
線虫を使ったがん検診「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」って何?
検査のために何をしないといけないか?
尿を一滴使うそうなので、尿検査と同じような尿の採取が必要。血液のように体に針を刺したり、バリウムや放射性物質を入れて大きな機械で画像を見ることも不要ないので、非常に簡単です。
これまでの癌検診とどう違う
これまでの癌検診
有効で簡便な一次スクリーニング手法がなかったので、年齢が上がりがんにかかりやすくなった高リスク群に対し二次スクリーニング的な検査を実施。
一次スクリーニング検査 ×(現在有効なものがない)
↓
二次スクリーニング検査 下記のような検査を対象者全員に実施
↓
精密検査
種類 | 検査方法 | 対象年齢 | 頻度 |
胃がん | 胃部X線検査 | 40歳以上 | 年に一回 |
肺がん | 胸部X線検査 | 40歳以上 | 年に一回 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 年に一回 |
乳がん | マンモグラフィ | 40歳以上 | 二年に一回 |
子宮頸がん | 細胞診等 | 20歳以上 | 二年に一回 |
対応できる種類
男性 | 女性 | |
現在 | 3種類 | 5種類 |
N-NOSE | 15種類 | 15種類 |
ちなみに、男性の3種類で全部の癌の47%、女性の5種類で64.2%しかカバーできていないので4割は初めからスルーされています。部位別がん罹患割合(2014年):日本対がん協会
精度(感度・特異度)
まず普段使わない言葉ですが、検査の有効性を確認する用語として、感度と特異度を解説します。
・感度 :がんがある人をがんがあると判定する確率⇒がんの見落としはどれくらい?
・特異度:がんがない人をがんがないと判定する確率⇒なくてもあるって判定される人もいる
実施方法・算出方法によってかなりの差があるそうですが・・ざっくり
検査種類 | 感度(%) | 特異度(%) |
N-NOSE | 86 | 92 |
胃部X線検査 | 70~80 | 85~90 |
胸部X線検査 | 63~88 | 95~99 |
便潜血検査 | 30~93 | 97 |
マンモグラフィ | 86 | 91 |
CEA:主に消化器系のマーカー | 25.0 | - |
抗p53抗体:新タイプのマーカー | 16.7 | - |
感度はN-NOSEのほうが優れているようです。特異度は検査の種類によって優劣つけがたいようです。これまでと同様にがんでなくても間違ってがんがあるかもって判定されることが1割弱あるようです。まずはN-NOSEで一次スクリーニング検査してから怪しい人に詳しい検査をするようにすればよいと発見者である広津さんの著書にも提案されていますが、そのとおりだと思います。
コスト
胃部X線・胸部X線・便潜血の3つを実施するよりも、N-NOSEが一回のほうが安いと思います。ちなみにN-NOSEは集団検診の場合だと思いますが、8~9千円予定だそうです。個人で実施する場合は現在12,500円だそうです。
残る課題
今までのがん検診も同じですが、がんではない人が、がんと判定される確率が1割弱発生する。ちょっと厄介なのは、今までなら大腸がん検診で引っかかったら、大腸の内視鏡検査受けましょうということになり、次のアクションがわかりやすいのですが、この検査では、全身のどこかにがんがあるかもってことになるので、全身のCTとか取らないといけないだろうかという悩みが出てきます。その際に健康保険が使えないと10万円くらいかかりそうです。これまで同様に保険が使えるようにしてもらわないと困りますが、今のところ保険は使えないそうです。
どこまでできるかわかりませんが、癌の種類をかぎ分ける線虫を開発しているそうですので、それにも期待したいと思います。
また癌が早期で小さすぎる場合、画像系の検診では発見することもできずもやもやした気持ちが残ってしますかもしれません。心配ならまた半年後くらいに精密検査してもらうって感じでしょうかね。
受けたいと思ったら
全国の主要な都市からサービスを展開している途中のようです。
東京・大阪・名古屋・仙台・金沢・京都・広島には持ち込みができる、N-NOSEステーション・サテライトというものがあり、自分で持っていけるそうです。そのほかには有料ですが自宅にも取りに来てくれるそうですが、現在では、県庁所在地とその周辺といったエリアに限定されています。
(参考:N-NOSE)
まとめ
今年は定期健康診断のついでに腫瘍マーカーを受診してみましたが、あまり有効ではないようです。来年はこのN-NOSEをやってみようと考えています。もし悪いほうの判定だったら高いけどCT受けようかな~、って今から悩んでもしょうがないですね。その時考えます。